本研究の目的は、発達障害児に焦点を当てた包括的な神経心理学的検査を作成すること、および本検査を自閉症児やADHD児、LD児などに施行して神経心理学的特徴を把握し発達的援助を行うことである。平成8〜10年に、同様の研究課題で科研費の補助を受けて研究を行い、神経心理学的検査を作成した。作成した神経心理学的検査は、(1)覚醒・注意に関する検査、(2)同時処理・継次処理に関する検査、(3)プランニングに関する検査より成る。本研究はこれまでの検査についてより完全なものとするため、さらに検査バッテリーを増やし、より洗練されたものにすることが目的である。主な研究課題は、(1)これまでの検討で不十分であった「覚醒・注意に関する検査」について組織的に検討すること、(2)発達援助について検討すること、(3)知的レベルの高い発達障害児に対する神経心理学的検査の検討、である。(1)については、4歳〜6歳児を対象とした「幼児用注意検査」(「持続的注意検査」と「選択的注意検査」の2つの下位検査より成る)と6〜12歳の小学生児童を対象とした「学童用注意検査」(「持続的注意検査」と「選択的注意検査」の2つの下位検査より成る)を作成し、これらの検査を4〜6歳児30名、6〜12歳児50名を対象に実施し、各年齢の正常基準値を算出した。(2)については、知的発達遅滞児2名を対象に発達のアンバランスの神経心理学的要因を明らかにし、支援への手立てを探ることを目的に、神経心理学的検査を施行し、対象児2名の認知情報処理過程の特徴と支援への手立てのポイントを明らかにした。(3)については、成人の脳損傷者を対象とした神経心理学的研究から前頭葉機能との関連が深いとされている「実行機能(executive function)」検査を検討し、その中から、6種類の検査を抽出して、これらの検査を8〜12歳児31名に施行して、各検査の正常基準値を求めた。
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