近代における日本人の人種観を明らかにするために、1500年代以降の宣教師による日本報告(ザビエル、フロイス等)の中で記述されている日本人の外国人に対する反応、行動を分析した。また、江戸時代の出島における記述、幕末から明治にかけて来日した欧米の人々の記録に残された日本人の外国人に対する見方や対応を現在整理している。同時に、外国人の日本人観についても分析中である。現在までの段階で得られた結果は、以下の通りである。1.一般の日本人にとって外国人(黒人、白人、東南アジアなどの黄色人)は、目に触れることの無い存在だった。2.宣教師に接した日本人の多くは強い好奇の目で彼らを見ていた。3.黒人に対しては、奴隷であり、一般の人間としては見ていなかった(野蛮人)。4.信者以外は、白人宣教師に対して、蔑視したり、乱暴な行動をとったりすることがあり、必ずしも憧憬の対象ではなかった。5.江戸時代から幕末にいたるまでに、欧米文化の優位性に気づき、白人に対する独特の憧憬と、東南アジアの人々や黒人に対する蔑視、野蛮人視が強くなり、人種ステレオタイプが強くなったと考えられる。6.「洋行」の一般化、欧米との経済関係に緊密化が進むにつれ、欧米崇拝が強まる一方で、欧米蔑視のアンビバレントな感情も強くなった。心理学的な研究にもとづいて知的な能力に関する人種的ステレオタイプが形成されるのは、明治期以降、欧米の研究が輸入されるに伴って生じた。以上と同時に、現代の日本人が黒人に対する人種的偏見、ステレオタイプを社会人と学生を対象に実験的に検討した。
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