研究概要 |
海外との交易が、長崎の出島に限定された時代、日本人がどのようにして西洋人に対する人種観を形成したのかを明らかにした。鎖国前においては、種子島に漂着した外国船乗組員や、遣欧使節の見てきた西洋事情をもとに、西洋人観や黒人観が形成されていた。この時期、西洋人にせっしょくのあった多くの日本人は、彼等を手づかみをし、ツバを吐き、土足で室内を歩き回る、野蛮な人々として見ていた。また、日常的に出会うことのなかった外国人は、江戸においても物珍しく、好奇の対象であった。一方、奴隷としての黒人に対する見方は、すでに今日の「黒人」観に共通する蔑視、侮蔑が強く含まれており、西洋人の見方がそのまま日本にとり入れられていた。海外との細々とした交易を維持していた出島を通じて、西洋人や黒人との接触もまた継続的に行われていた。こうした鎖国前後の西洋人観・黒人観の形成の過程を明らかにし、「鎖国前後における日本人の西洋人観・黒人観の心理一歴史的背景」としてまとめた(埼玉大学紀要)。次に、幕末から明治にかけての開国期の目本人の西洋人に対する意識・心理を種々の資料を基に明らかにした。この時期は、尊皇攘夷運動に見られるように、外国人に対する反発が強かった。西洋文化に対する憧憬と反感が同居し、日本「民族」を西欧人並に優秀で・強靱な「人種」に改良することが焦眉の課題であった。これらの分析は、「近代日本の『人種』・『民族』意識と心理学研究-『心理研究』の分析を通して-」にまとめた(埼玉大学紀要)。他方、現代におけるマイノリティに対する意識と偏見の問題を明らかにするため、セクシャルマイノリティに対する調査及び聞き取りを行った。成果は、「セクシャル・マイノリティに対するセクシャル・マジョリティの態度とカミング・アウトへの反応(埼玉大学紀要)、及び「セクシャル・マイノリティとカミングアウト」(心理科学,投稿中)としてまとめた。
|