研究の第部では、15世紀から19世紀末までの西洋人と黒人に対する日本人の人種ステレオタイプに関する歴史的、心理的過程について検討した。港町に住む人々は、16世紀にはすでに黒人に対する人種ステレオタイプをもっていたかもしれない。貿易、軍事、海外の事件に関わる諸問題は、江戸時代の末になって初めて、日本人と西洋人との間の関係に影響を及ぼす重要な心理、歴史的背景要因になった。明治末期から、心理学専門の学会誌として発行された「心理研究」をとりあげ、内容分析を行った。その結果、日本民族・人種の改良を説く「優生学」的な論文が多く出されており、人種や民族への関心が極めて強かったことがわかる。西洋人に対する憧憬と侮蔑の二面をもちながら、西洋人並みに日本民族を優良化することが重要課題であった。研究の第二部では、セクシャル・マジョリティのセクシャル・マイノリティに対する態度と反応を吟味した。異性愛者は、同性愛者特にホモ・セクシャルの人に対して強い否定的な感情を抱く割合が高かった。また、日本人の成人の人種ステレオタイプと偏見を、絵本の挿絵から抜き出した(ちびくろ)サンボに対する彼等の反応を分析することによって明らかにした。つまり黒人の子どもに対しては、知的ではなく、文化的でもなく、責任感もないといった印象を強くもっている人が多かった。これらの研究は、今日、多くの日本人が、マイノリティや人種集団に対してステレオタイプや偏見をもっていることを示唆するものである。
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