研究概要 |
本研究は,現代青年の政治不信の構造を明らかにするとともに,政治不信形成に影響する要因や政治不信の結果として生ずる心理・行為傾向との関連性を明らかにすることを目的としている.本年度においては,政治不信や政治的有効性感覚,政治的関心が政治離れ状態や政治的態度,さらに政治的行為にどのような影響を与えているのかを明らかにするために調査IVを行った.政治不信,政治的有効性感覚および政治的関心を説明変数,政治との主観的距離感,政治的態度および国政選挙における投票意志を基準変数とする重回帰分析の結果,政治との主観的距離感に対して政治不信はまったく影響せず,政治的関心および政治的有効性感覚が有意な負の効果を示していた.政治的態度のうちで統制主義的な態度には政治的関心が負の有意な,体制維持に向かう政治的態度には正の有意な影響を持っていた.また,国政選挙における投票意志に対しては政治的関心のみが有意な負の影響を示していた.以上から,政治不信は政治離れ状態とは関係がなく,政治離れ状態を説明する要因として重要であるのは,政治に対する関心の低さと政治的有効性感覚の低さであることが確認された.同じように,国政選挙における投票意志の強さに貢献しているのは政治的関心の高さであり,政治不信の程度や政治に対する個人の有能感のレベルは無関係であることも示された.以上の結果およびKrampen(2000)の論考を手がかりとして,現代青年の行動・心理的特徴を心理的背景要因,政治的有効性感覚や政治的コンピテンスを個人的資源要因,さらに政治的関心や知識を政治関連要因として,これら各要因の複合的な結合によって青年の政治不信を説明するモデルが考案され,政治的行動をさらに構造的にとらえる視点を加味した上で政治不信と政治的行動様式との間の関連性について実証的に検討することが今後の課題として提示された.
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