自作のビデオ教材を用いて心理教育的な実験セッションの実践研究を継続し、記録を単報にまとめる作業を進めた。過去の横断調査データの分析から、ソーシャルスキルと異文化間対人関係形成についての論文化を進めた。学校場面に加えてホームステイ場面におけるホストとゲストのソーシャルスキルについて調査を追加し、質的研究法によって仮説生成的にソーシャルスキル獲得過程にへの示唆をまとめた。理論構築と展望のための論説を執筆し、研究の理論化を試みた。 実験セッションは、国立大学の大学院生:1日5時限×4日間を2シリーズ、NGOによる研修生:1日5時間×2ヶ月間を2シリーズ、国立大学の大学生:週1回×3週間を2シリーズ実施した。セッションのプレーポスト比較では、ソーシャルスキル学習による異文化理解の進展と、積極的対処への意欲向上が示された。郵送法による質問紙調査では国立大学の大学生・大学院生と在日外国人留学生に協力してもらい、両者間の対人関係の原因認知を中心に、ソーシャルスキルの実施との関わりを調べた。日本人学生は自分たちの外国語能力不足に原因を帰属しがちだが、留学生は双方のソーシャルスキル不足に帰属する傾向が顕著で、ソーシャルスキル学習の潜在的ニーズの存在が指摘できる。ホストファミリーと留学生を対象とした面接調査では、ソーシャルスキルの実践と獲得過程の分析を通通じて、教育的介入による両者の関係性の構築ならびに改善の可能性を指摘した。最後に論説において、臨床社会心理学の学問的枠組みを整理して展開の可能性を探り、異文化適応の心理教育について今回の研究結果に基づくプログラムとその結果を報告し、実践的な提案とした。
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