研究概要 |
不安や抑うつの発症や維持に,人の情報処理上の歪みが関係していると考えられている。現在の所,注意バイアスや記憶バイアス,解釈バイアスが検討の対象となっている。これらの認知バイアスと認知情報処理過程との関連を検討することで,不安や抑うつの特徴を明らかにすることができるとともに,不安や抑うつの評価や認知変容に基づく治療法の開発にもつなげることが可能であると考えている。本研究はその基礎研究として位置づけることができる。本年度は以下の3つの検討を行った。 (1)注意バイアスの生起とネガティブ気分の維持に関する検討 注意バイアスとネガティブ気分の維持との関連について,特性不安の異なる被験者を用いて検討した。高特性不安者のみで,脅威語への注意バイアスが認められ,ネガティブ気分も維持されることが示された。注意バイアスによる脅威情報の入力が,ネガティブ気分を維持させている可能性がある。 (2)注意バイアスと対処スタイルの関連に関する検討 不安の情報処理段階別に,注意バイアスと対処スタイルの関連を検討した。情報処理が進むにつれ,接近的対処を行うsensitizerは脅威語に注意を向けるバイアスを生じ,回避的対処を行うrepressorは脅威語から回避的になるバイアスを示すことが明らかになった。 (3)抑うつにおける解釈バイアスに関する検討 抑うつスキーマと解釈バイアスの関係について検討したものである。抑うつスキーマの高低で被験者を分け,あいまい図形の解釈を行わせた。その結果,抑うつスキーマの存在が,ネガティブな解釈を促進させることが明らかになった。
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