研究概要 |
広島市及び東広島市の小学校(11校)、幼稚園、保育所(13園)の幼児児童823名(年齢3歳〜12歳)を対象に、M-ABC(ムーブメント能力検査)と担当教師あるいは保育士による評価(身体運動評価尺度)を実施する計画である。現在までのところ4歳から6歳の幼児138名の検査が終了している。M-ABCは、1985年にDCD発見のために英国で標準化されたもので、8つの身体動作の評価には生態学的妥当性が考慮されている。わが国での使用においても文化差について検討したところ、それぞれの項目について、原版のM-ABCと近似した傾向を示したため、わが国での使用は可能であると考えられた。評価判別に関しては原版では,成績の上位から75%域を0点,以下,85%までを1点,90%までを2点,95%までを3点,98%までを4点とし,そして成績の最下位2%域が5点として設定している。つまりその下位検査の課題で下位15%域,すなわち2-3点ならリスク児,下位5%域である4-5点ならハイリスク児として評価され,すなわち身体的不器用な子どもとして判別・評価されるようになっている。この点に関しては、さらにサンプル数を増やして、それぞれの年齢での基準値を求めることが必要となると考えられる。 検査項目の妥当性に関しては、本検査は(1)手先の器用さ(3項目)、(2)ボール・スキル(2項目)、(3)バランススキル(3項目)の3領域から構成されているが、先行研究によると協応運動を総合的に評価するには、ある指示に反応して一定速さでスキルを実行するといった運動反応の検査も必要であるとの指摘もあり、本実験の遂行に当たっては、Bruininks-Ozrezky Motor Proficiency検査の反応棒(上から放たれた板を、地面につかないように補足する)という検査を試行的に併用してみた。その結果、他の検査項目と同様に協応運動でのリスクが高い幼児においても、運動反応時間が有意に遅いことから、本検査項目を加えることも可能であることが示唆された。身体運動評価尺度については、原版に添付されている教師評定尺度を用いて、実施したところ、検査バッテリーから得られたの量的な結果を裏付けるものであった。従来、主観的とされる教師保育者の幼児の日常場面での観察が、客観的にも精度が高いという可能性について示唆するものであろう。
|