研究概要 |
本年度は,小学校入学直後の児童における教室ルールの習得と定着の過程を検討した。小学校1年生1学級の担任教師Kと児童を対象に,第1期(4月の入学式の翌日から5月初旬までのほぼ毎日),第2期(6月下旬から7月下旬の間の9日間),第3期(11月の10日間)のそれぞれにおいて,授業やホームルーム,給食などの学校生活場面における教師-児童間のコミュニケーションを観察,録画した。これに教育観・指導観,具体的指導意図に関するインタビューを加えたうえで第1期分について分析した。 K教師は「規律正しい態度・行動を育てる」原理と「自主性・個性を伸ばす」原理という2つの実践の原理をもち,これを具体的に実践する方略として,説明する,注意する,ほめる,待つ,ほのめかすの5つを用いていることがわかった。教室ルールとして,活動,姿勢,発表,時間,係に関するルールの5つが見出された。コミュニケーション677事例からコミュニケーション・パタンを検討した結果,(1)「規律正しい態度・行動を育てる」場面では,注意する方略が48%を占めもっとも多かった。(2)「自主性・個性を伸ばす」場面では,ほめる方略が63%を占めもっとも多かった。(3)待つという方略が数回みられたことから,一部の児童はK教師の意図を入学直後から識別できている可能生が高い。(4)4月中旬はほめる場面が多かったが,5月に入る頃には注意する場面が多くなった。(5)特定の児童にスポットライトをあてる時間を作るようにしていた。 今後,第2,第3期分の分析も加え,より長期の定着過程を明らかにする必要がある。
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