研究概要 |
本年度は,ある公立小学校1年生児童に対する担任教師(教歴32年の女性)の対応・指導の様子を入学直後から1年間観察することによって,この教師の学級作りに関する実践のルールを明らかにすることを目的とした。昨年度からの主な改善点は,(1)観察校を附属小学校からさまざまな児童が在籍する公立小学校に変更したこと,(2)学級づくりに関連する対応・指導事例を数多く観察できるように授業だけでなく朝の会も観察したこと,(3)教師と児童の具体的なやりとりを事例として抜き出すことによって文脈を重視した分析を行ったことであった。観察第1期は入学式翌々日の2001年4月12日から5月1日の間に11日間,第2期は10月1日から11月14日の間に10日間,第3期は2002年1月29日から2月16日の間に11日間,計32日間であった。現在までに,第1期と第2期の授業時数にして68時間分を分析した。その際,学級児童35名(男子20名,子15名)のうち,小学校が初めての集団生活であったために,授業に集中できなかったり,クラスメイトといばしばぶつかったN児(男)と完全型ADHDの行動特徴を顕著に示すY児(男)に焦点を当てて観察した。その結果,「ペースの遅いN児を目立たせないように待つ」,「朝の会でN児をほめる」,「児童を介して間接的にY児を指導する」事例など数十事例を通して,この教師の実践のルールとしてつぎの6つを見出した。すなわち,(1)子ども一人ひとりのペースに合わせた対応をする,(2)子ども一人ひとりの変化に応じた対応をする,(3)叱る時はなるべくみんなの前で叱らない,(4)みんなの前で叱る場合には「この子が大事だから叱るんだjということを子ども達に伝える,(5)人の良いところを見つける目を養わせる,(6)T自身が子どもを常に肯定的な視点で見る。今後,第3期分も加え,1年間にわたる学級づくりを物語にしたい。
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