研究概要 |
本研究は,学級の仲間から拒否を受けている多動不注意傾向のある児童が在籍する高学年(小学校5年)の学級において,児童同士の社会的相互作用を促進するために,6セッションからなる集団社会的スキル訓練を導入し,集団社会的スキル訓練が多動不注意傾向のある対象児童及び学級に在籍する児童全員に,どのような影響を与えるかを検討した。また訓練後1年を経過した時点で,再度アセスメントを行い,集団社会的スキル訓練の長期的維持効果について調査した。 本研究では,「聞くスキル」「共感スキル」「怒りコントロールスキル」の3つのスキルを標的スキルとした。そして教室での授業(1回45分間で3回)と朝自習の時間を使ったゲームを通して行う行動リハーサル(3回)がそれぞれ交互に実践された。 集団社会的スキル訓練の結果,自己評定と教師評定によって査定された社会的スキル得点は,訓練前から訓練後にかけて有意に向上し,さらに3ヵ月後のフォローアップ査定時にも訓練効果が維持されていた。しかし,1年後のフォローアップ査定時には、葛藤解決スキルに有意に近い維持が認められたものの,それ以外の社会的スキル得点には維持効果が出現しなかった。 不注意多動傾向を示す児童に対する集団社会的スキル訓練の効果は,顕著であった。先に述べた社会的スキル査定では,訓練後,3ヵ月後,そして1年後のいずれにおいても訓練前よりも得点の大幅な増加が認められ,また休憩時間等の行動観察においても,適切な働きかけがポジティブに変化し,ネガティブな行動は大きく減少した。
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