学習障害は、外見的には障害があることが見えにくいため、「やる気がない」、「怠けている」、「反抗的」などと誤解されやすい軽度の障害である。学習障害児の母親においても、自分の子どもが学習障害をもつことを知っている場合と知らない場合では、子どもの言動についての理解の仕方が異なり、育児ストレスの内容や大きさ、養育態度に違いがあると考えられる。 本研究は、幼稚園、保育園の年長組の幼児のうち、専門機関によって学習障害を持つとの診断を受けた子ども(LD群)、専門機関を受診していないが学習障害児であるとみられる子ども(未受診群)、健常児(健常群)の3群の母親(各13名)を対象にした。用いた尺度は、新美・植村(1980)の育児ストレス尺度を修正したもの(16カテゴリー、全84項目)と、串間・福成(1999)が作成した養育態度検査(8カテゴリー、全72項目)であり、それぞれの母親に、質問紙の形で回答してもらった。育児ストレス尺度は、各質問項目に対して2点尺度、養育態度尺度は4点尺度で回答してもらった。 育児ストレスの各カテゴリーごとに、平均得点を3群間で比較したところ、「この子と母親とのかかわり」のカテゴリーにおいて、LD群と未受診群の間には差がなく、これらの2群は健常群よりも有意に母親の育児ストレスが高かった。 養育態度について、「過干渉」を示す親の割合は、LD群、未受診群、健常群の順に高かったが、未受診群は他の2群のいずれとも有意差がなく、LD群は健常群よりも「過干渉」な母親の割合が高かった。また、「厳格」のカテゴリーでは、LD群よりも未受診群の母親の方が割合が大きかった。 これらのことから、LD児をもつ母親は育児の面でストレスを感じることが多く、過干渉になりがちであるが、LDであるとの診断は、母親が子どもに対して過度に厳格に接することを防ぐのに有用であると言える。
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