13年度は、12年前に子育てに関する調査を行った120世帯を対象に、ンテンシブイな訪問面接調査、「過疎・高齢化山村における家族の変動に関する調査」をおこない、有効回答数79をえた。 調査結果から選られた知見の第一は、過疎・高齢化に伴う生活基盤の脆弱化ということである。その一つは、家族の生活の不安定化の方向である。対象世帯から、この12年間で流出(転出)した総人口は112人(1世帯平均1.4人)、出生は僅か10人、死亡32人であるが社会的増加を示す転入は12人に過ぎない。家族は、ライフステージの上昇と共に、夫婦世帯に収斂しつつ小世帯化しきている。そうした状況の中で、他出した子供との関係は、精神的な援助関係が主で、経済的には期待できず(「あてにできる」は28%)、他出子と親を含めた修正拡大家族の機能は、さらに弱まる方向にむかっている。二つめは、家族関係や規範の変化である。現在の生活には厳しいものがあるにもかかわらず(「生活が苦しい」3割)、生活や家族の今後の「見通し」という点では、「今よりも望ましくなって行く」と考えるものが多いが、家族規範や実生活が「個人化」を辿っていると感じている人が多く(4割)、家族関係や規範の面でも不安定化がすすんでいる。 第一は、地域生活の「剥奪化」の方向である。過疎や高齢化の進展それ自体が、地域生活の不安定化を意味しているが、将来見通しとして「悪くなる」と見ている人が65%ときわめて高い。道路等の社会資本の整備や社会サービスの改善がすすんでも、それらを活用する手段やアクセス方法が個別生活レベルで十分に確保されていないことが、地域生活(生活の共同的維持と人間関係)の危機認識に結び付いていることがわかった。
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