研究概要 |
本研究は,学級担任教師のリーダーシップ・トレーニング技法の開発とその有効性を検討することを目的とする実践的研究である.本研究は,平成9-11年度の「教師のリーダーシップ・トレーニングの開発」を継承した3カ年計画の初年度として次のような研究を実施した. 小学校の学級担任教師のリーダーシップ・トレーニング技法の開発と有効性の検討のために,福岡市の教育委員会の協力を得て,福岡市の小学校教師の自主研修グループと福岡県前原市立の小学校の学級のグループ・ダイナミックスと当該学級の担任教師のリーダーシップを把握する調査を実施した.第1回調査は,平成12年9月中旬に,3小学校の3-6年の生徒(17学級,558名)を対象に実施した. 調査内容は,担任教師のリーダーシップ行動(20項目)とスクール・モラール(22項目),教師像,生徒の交友関係,教師のストレス,生徒のストレス等である.教師のリーダーシップ測定項目は,三隅・吉崎・篠原(1977)のPM測定項目を再度因子分析してP項目の2項目を新しい項目に入れ替え,20項目を採用した.スクール・モラール項目は,学校に対する態度,学級連帯性,学習意欲,学級雰囲気の19項目である.P,M2因子を組み合わせた4タイプ(PM,M,P,pm)とスクール・モラールとの関係は,従来のPM研究と一致して,スクール・モラール4因子とも,リーダーシップの効果性は,PM>M>P≧pmの順位であった.数量化理論第III類による教師像のパタン分類によると,望ましい性格特性・適切な行動とPM,M型,望ましくない特性・不適切な行動とP,pm型が一致することが見いだされた. これらの結果を基礎として13名の教師を参加者として,10月下旬に半日コースのリーダーシップ・トレーニングを実施した.内容は,講義,データ・フィードバック,学級分析,自己分析,集団討議,行動目標決定,集団決定である.学級における実践期間は,平成12年11月〜平成13年2月である.1ヶ月単位の学級におけるリーダーシップ行動実践,実践行動の振り返り等の4ラウンドからなる.平成13年1月中旬に第2回調査を実施し,その結果をトレーニング終了後の平成13年3月にトレーニング効果としてフィードバックした.毎月,リーダーシップ行動の実践,実践行動の振り返りのレポートを課した. 第2回調査データで,スーパーP型の教師のP得点が-4.97(44.73→41.33),M得点が+2.40(18.83→20.87)と大幅に改善され,pm型となり,トレーニングの効果が見いだされた.
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