本研究は、平成12年度からの3年間で、慢性疾患の発症を経験した子どもとその母親を対象として、主観的病気体験と対処の様相について、質的アプローチを用いて明らかにしようとするものである。患児と母親がどのように病気を体験し対処していくのか、時間経過を追いながらデータを蓄積してゆくが、その際、患児と母親の主観的病気体験すなわち病気についての語り(narrative)を把握することと、患児と母親とが病気体験を共通のテーマとしてどのように問題解決へと向かおうとするのかについてsocial action theoryの視点からアプローチすること、の2点を研究の柱とした。 このような研究方法はまだ新しく、筆者はこれまで国外の研究者との交流により具体的方法を学んできた。しかしながら、実際に日本でデータ収集を開始するにあたっては、あらためて方法の細部にいたるまでの再検討が必要であった。そのため研究の初年度である本年度は、まず、国外の研究者たちの数年間にわたるプロジェクトに筆者が参加した際に入手した質的データの蓄積を日本語訳しながら、日本での実施手順や記録用紙のフォーマットを作成することを中心とした。その後、小児科クリニックなどの協力を得て、現在、データの蓄積を続けているところである。データ収集は、母子1事例につき3ヶ月から6ヶ月の追跡を行いながら順次新たな事例と入れ替えて行くという方法であり、その間の膨大な質的データのまとめにも時間を要するため、まだ成果発表の段階には至っていない。 当初の3年計画において、初年度は準備とデータ収集開始の時期としたが、実際には、準備作業にかなり時間を要することとなった。第2年目である平成13年度にいっそうのデータ収集を行い、最終年度となる平成14年度には総合的なデータのまとめと発表を予定している。
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