研究概要 |
本研究の目的は、小学校から中学校へと進学する前後における子どもたちの心理的変化の特徴について、4年間にわたる縦断的調査のデータを分析することによって検討することであった。 調査協力者は、東京都および神奈川県の3市にある公立小学校4校(2002年度から5校)と公立中学校3校に在籍する児童(小学校4〜6年生)と生徒(中学校1〜3年生)であった。今の生活、自分自身の評価、学校の勉強や友だち、日常生活での病理現象、時間的展望、中学校進学についての意識に関する質問紙調査が、2000〜2003年にかけて7回実施され、15,718人分のデータが集められた。 得られた結果は、以下のようにまとめることができる。 1.時間的展望の変化プロセス 小学4年生から中学3年生にかけて、次のような時間的展望に関する発達的変化が明らかになった。「将来の希望」は、学年とともに低下した。「空虚感」は、小学4〜6年生では次第に低下していくが、中学生になると次第に増加していった。「将来目標の渇望」については、年齢にともなう発達的変化傾向は確認できなかった。「計画性」は、学年とともに低下した。 2.中学校への進学にともなう意識変化 小学6年生から中学1年生にかけて、中学校への進学にともなって、次のような意識変化が存在することが明らかになった。 中学校への入学に際しては、時間的展望には変化は見られなかった。自尊心や勉強理解度が高まり、逆に、不定愁訴が減っていたことから、中学入学後、学校で適応的に過ごしているのと考えられた。 中学校生活へ不安の感情は、単独では時間的展望に否定的な影響を及ぼし、不安と期待が組み合わさると不安の影響力が減少し、肯定的な方向に変化した。 中学入学前後の勉強の理解度の変動は、時間的展望の変化と正の関連をもっていた。
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