研究概要 |
抑制機能には2つのタイプがあると考えられるようになってきている(Kramer & Strayer,2001).一つは,location-based inhibitionであり,もう一つは,identity-based inhibitionである.平成12年度の研究において,lccation-based inhibitionの機能は高齢者でも衰退がみられないこと.さらに,発達の前半期においてもこの現象が確認されたことから,抑制機能のうち,location-based inhibitionは,加齢の影響をうけにくい抑制機能であることが推察された.そこで,今年度は,identity-based inhibitionに着目して,stop-signal taskと場所弁別課題を組み合わせた課題を作成し,大学生を対象に,予備実験を行った.予備実験は以下のようなものである、城南電器技術開発センター製のMETSCOT(テスト版)を用いた.装置はDOS/Vパソコンとコントロール本体とスイッチから形成されている、スイッチは4つ用いた.スイッチの大きさは4つ共通で,直径7.8cm. スイッチ本体が点灯できるようになっている.これを右手と左手に2つずつ軽く触れるように配列した.課題は次のようなものである.スイッチが点灯したら,なるべく速くスイッチを押すこと.ただし,パソコン本体からのビープ音が提示されたら,押してはいけないという課題である.ビープ音は点灯と同時になるように設定した.提示されるスイッチの点灯時間は500ms.刺激間隔時間も500msとした.実験の結果,ビープ音が提示され,抑制しなければならない条件で,誤ってスイッチを押してしまうのは,直前で同じ手を使って,スイッチを押した場合の多いことが分かった.いうなれば,「保続」に近い現象であるといえ,直前の反応を抑制する機能を示したものと思われた.来年度はこの課題を用いて,加齢の影響が現れやすい抑制機能の問題を検討する予定である.
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