高齢者の健康維持、福祉の充実に向けて高齢者の生活により多くの笑いを取り入れる手がかりとするために、高齢者が笑えるユーモアのタイプと高齢者のユーモアのセンスについて、特にその年代による変化と性別の差を、福岡都市圏に在住の50歳代から70歳代までの男女各240人に対する調査によって明らかにした。 1.16種の一コマ漫画全体、さらにその16種のなかの攻撃性や性の傾向性の強い一コマ漫画、ユーモアのポイントを見つけるのに知的作業を要する一コマ漫画、高齢者を否定的に扱う一コマ漫画、同じく肯定的に扱う一コマ漫画それぞれに対する調査対象の高齢者の「好み(感じたおかしさ、ユーモアの程度の評定)」についてみた。いずれのユーモアのタイプについても、その好みに有意な年代差ならびに性差はみられなかった。 また調査対象者が、この全16種のなかで「ユーモアのポイントを理解できた一コマ漫画の数」については、知的ユーモアの好みに関して男性が優位であるとこれまで言われてきた通りに、男性の方が女性より有意に多かった。また加齢による知的活動水準の低下を反映してか、年代が上がるにつれて有意により少なくなった。 2.15項目から構成される調査表によって「ユーモアのセンス]の自己評定を求めた。ユーモアを用いて他者を笑わせようとする傾向である「ユーモアの対人関係性」、またユーモアや笑いを好み、その機能や役割を重要視する傾向である「ユーモアを肯定する態度」の二つのユーモアのセンスの側面については、女性のほうが男性より優位であった。ユーモアのセンスのもう一側面、ユーモアや笑いとは逆方向の感情傾向である「否定的感情表出」については、60、70歳代とより高齢になるほど低くなり、加齢に伴う感情活動全般の沈静化を反映していた。
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