本研究は犯罪行為を一連の選択と決定の過程と考え、それぞれの段階で選択と決定に関与する地域環境要因は異なると仮定した。そして、犯罪と環境要因の関係を明らかにし、犯罪抑止や犯罪不安の低減を可能にする地域のあり方を明らかにするためには各段階ごとの分析が必要であると考え、犯罪行為の遂行過程において選択と決定が行われるそれぞれの段階に対応する地域水準毎に、犯罪発生や住民の犯罪への不安に関与する地域環境要因及び住居構造要因を明らかにすることを目的とした。具体的には、集合住宅を対象として、その近隣環境条件、立地場所、住棟構造などの影響を、それらの相互作用も含めて検討することを目的としている。 今年度はその調査の準備段階として2つの作業を行った。ひとつは調査対象地域の選定であり、同一近隣地域内で立地場所や住棟構造の異なる集合住宅が複数存在する場所を選定することである。もう一つは、質問票作成のための準備であり、先行研究で用いられてきた質問項目の再検討と、先行研究のreviewである。 前者については既に名古屋市内の4区8地域を選定し、1200名の調査対象者を住民票から無作為に抽出し終えた。現在、郵送のための1200名の住所録を作成している段階である。 後者の質問票の作成では、まず、先行研究の再分析であるが、これについては既に終了した。それと同時に行った集合住宅を対象とした犯罪及び犯罪不安に関する先行研究のreviewについては、平成12年度の日本犯罪心理学会において発表した。そのうえで、第一回の調査で用いる質問票を作成した。 このように、今年度の研究の進行は予定通り進み、平成13年度に入った段階で調査を実施する予定である。
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