本研究では、犯罪発生に関与する地域環境、住居環境要因を明らかにすることを目的として調査をおこなった。その際、犯罪行為を選択と決定からなる一連の過程と考え、地域環境要因、住居環境要因も、それぞれの決定段階で異なる可能性があると考えた。 まず第1回調査として、名古屋市内の4区8地域にある高層集合住宅居住者を対象として、成人女性における犯罪被害体験、被害の見聞、犯罪不安の調査をおこなった。調査票の項目は犯罪発生状況や犯罪不安の強さに関する項目、住宅特性に関する項目、防犯設備に関する項目、地域環境評価に関する項目、回答者の属性に関する項目から構成されている。調査表は郵送し、回収も郵送によった。調査時期は平成13年4月から5月の間であった。 結果は以下のとおりである。回収率は45.4%(526/1158)であった。まず、環境条件と犯罪発生率を罪種ごとに分析した。その結果、侵入・侵入盗では複数棟から構成される高層住宅で被害が多いという結果が得られた。自転車盗、車・バイク盗、車上狙いなどの乗り物関連の犯罪は立地場所によって被害が異なり、住宅地にある高層住宅の方が駅周辺にある高層住宅よりも被害が多かった。また、これらの犯罪では、複数棟からなる高層住宅で被害が多かった。他方、性犯罪では住棟数の主効果も得られたが、立地場所と住棟数の相互作用もみられ、住棟数の効果は駅周辺に立地する高層住宅で顕著であった。 犯罪不安に関しては現在、引き続き分析をおこなっている段階である。 このように第1回調査では地域環境要因と住居環境要因の交互作用が一部であったが認められた。この結果をさらに確認するために現在、第2回調査を埼玉県内の高層住宅を対象に実施している段階である。
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