平成12年度は高齢者の死の準備状態を質問紙調査により把握した。対象は老人大学の受講生250名、平均年齢67歳で男女ほぼ半数である。希望する死亡場所は自宅が46%で最も多く、看取って欲しい相手は配偶者、娘などであった。死を話題にしている頻度は尊厳死や病名告知などは約80%が行っており、その話し相手は配偶者が多数である。自分の死が避けられないときの対応についての希望は60%が伝えており、その70%が真実を伝えて欲しいと希望していた。 平成13年度は老人大学受講生への死の準備学習支援のワークショップを実施した。死の準備状態調査時に講義の1ヵ月後の2回のワークショップへの参加者を募集した。39名の参加者(男15名、女24名)を5グループに分け、話し合いやロールプレイを中心のグループワークを行った。ワークショップの前後に調査により評価を行った。参加動機は「先月の講義内容を詳しく知りたい」、「新しい情報を得たい」、「他人の死の思いや看取りについての話を聞きたい」など、情報収集があげられた。ワークショップ後の評価では「有用な情報が得られた」(82.4%)、「他人の話を十分に聞けた」(88.2%)、「満足した」(78.8%)など、参加型学習としての評価が得られた。 平成14年度はワークショップ参加者に対して追跡調査を行い、死の準備学習支援プログラムの評価を行った。追跡調査はワークショップ終了後6か月後に郵送で行った。半構成質問紙で、自由記述で記入を求めた。8人より回収された。ワークショップ参加後の変化については、気持ちの変化としては、近いうちに訪れるだろう死に対して心の準備をしなければと思った、最期まで尊厳ある生活を送りたいという気持ちが強まったなどが上げられた。行動したこととしては、身辺整理、病気の兄弟を見舞う、延命処置をしないように文書を医師と家族用に書いたなどが上げられ、また、家族に自分の意思を伝えたなどが述べられていた。 このように、死の準備学習の講義、ワークショップの体験学習、追跡調査より、高齢者は死の準備について考え、行動が促進される事が見受けられた。さらに、その体験を次年度のワークショップで人に伝える役割にも参加があり、本プログラムは死の準備学習を促進すると評価できる。
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