研究課題/領域番号 |
12610160
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研究機関 | 独立行政法人国立特殊教育総合研究所 |
研究代表者 |
篁 倫子 独立行政法人国立特殊教育総合研究所, 病弱教育研究部, 室長 (10280570)
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研究分担者 |
上野 一彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20012578)
海津 亜希子 独立行政法人国立特殊教育総合研究所, 病弱教育研究部, 研究員 (00342957)
原 仁 独立行政法人国立特殊教育総合研究所, 病弱教育研究部, 部長 (40120034)
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キーワード | 学習障害:LD / 評価 / 判断手法 / 教育診断法 |
研究概要 |
学習障害の判断には子どもの学習状況や学力の把握が不可欠であり、本邦では結果に基づいて指導方略も作成できるような、いわゆる「教育診断法」の開発が早急に求められている。 本研究ではLDDI : Learning Disabilities Diagnostic Inventory (Hammillら、1998)、学習領域スキル別つまづきチェックリスト(海津、2000)を検討し、学習指導要領を参考にしながら聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する、行動、社会の8領域134項目から成るLDI : Learning Disabilities Inventory(学習障害インベントリー)を作成した。 今年度はこの調査方法の信頼性および妥当性を検討するためにパイロット研究を行った。5県1都で小学校の通常学級、通級指導教室、特殊学級並びに民間の指導機関で学習障害(以下LD)のある児童あるいは一般の児童の指導を行っている20名の教師/指導者を協力者とした。協力者が実際指導にあたっている小学校2年、4年、6年の児童生徒52名(男子37名、女子15名)の評定結果が回収され、このうち21例(40%)がLDの診断/判断を受けていた。評価は4件法(1点〜4点)でつまずきの程度が著しいほど評点が高くなり、LDの特徴を有していることになる。 統計的検討から(1)項目の信頼性については「推論する」以外の領域は.900以上の高い信頼係数を得た。学年ごとの結果も2年の「推論する」の.41以外はいずれも.882から.978の範囲にあった。また、(2)項目の妥当性については学習障害の疑いがある21例をLD群とし、残りの31例を対照群とし8領域の評点平均を比較検討を行った。いずれの学年のいずれの領域においてもLD群の領域評点はCON群のそれよりも高かったが、推計学的に有意差がみられたのは、全体では「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」、「行動」、「社会性」、2年は「聞く」、4年は「聞く」、「話す」、「書く」、「行動」、「社会性」、6年は「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」、「社会性」の領域だった。次に、(3)調査票が学習障害の有無や学力を弁別することができるか否かを検討するため、領域・学年ごとに判別分析を行った。その結果、高得点はLDの有無と、教師が評価した学級内の相対的学力の双方に関連していることが確認された。従って、本インベントリーからLDの可能性を判断するためには、その子どもの全領域のプロファイルを作成して、領域間の差、落ち込んだ領域と同時に、平均範囲かそれ以上の学習領域があるか否かなどを検討することが不可欠である。すなわち、どのようなプロファイルを示す子どもをLD、あるいはLD疑いと判断されるかを検討することが必要である。
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