本研究は、「大都市圏に入らない県庁所在地自治体の育児助成にかかわる施策、子育て、育児支援政策が、自治体のどの部局でどのようなものとして計画されているか」「地方自治体では、子育て中の母親の育児支援ニーズをどのように把握し、そのニーズにどのように対応しているのか」を確認し、地方都市での育児支援の可能性と限界を検討するものであった。 本研究を通して明らかになったことは以下の点である。 まず国の方針としては推進の方向が強くうちだされている子育て支援も、地方都市の自治体では、実質的には市全体の施策の中心的課題にはなっておらず、人員を増加するほどの対策はほとんどとられていない。県庁所在地自治体を全体的にながめた場合、育児支援を重点施策と基本計画等に定める自治体は多いが、地域特性を活かした独自の子育て支援施策を総合的に打ち出している市は多くない。また社会福祉協議会やNPO団体が独自のとり組みをしているところもあり、自治体の事業を知るだけでは、その地域全体のとり組みを明らかにはできないことがわかった。この点は今後の課題となった。 事例研究として取り上げた岩手県の県庁所在地である盛岡市の保健センター事業「育児教室」受講者や周辺自治体の1つ矢巾町の「育児支援事業」参加者から盛岡市及び矢巾町の事業への参加経緯や育児支援ニーズについて面接調査した結果からわかったことは以下の点である。 「育児教室」に参加した母親の第1のニーズは「育児に関する専門知識をうること」であったが、それと同時に自分の子どもと同年齢(月齢)の子どもがどのように育っているか、または、育てられているかを知る機会として「育児教室」を捉えており、「つどいの場を提供すること」も支援事業には重要な要素と捉えるべきだという点である。 以上の検討結果をふまえて、「地方都市の自治体が育児支援をする場合、どの範囲で行うことが市民によって要求されているのか」を具体的に検討することが今後の課題となっている。
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