本研究は、95年・96年の2カ年に亘って新潟県に焦点を絞って行った「地方」における女性の政治参加現状に関する実態把握調査に基づいて、当該女性議員のライフコースに焦点を当てて、女性が政治参画するための諸条件などを探るとともに、さらに、女性が置かれている状況を明確にするために、男性議員との比較調査を行った。その際に地方議会における女性議員比率の高低に基づく差異(地域的差異或いは女性議員効果)を明確にするために、高比率地域(20%以上の東京都の7議会)と低比率地域(5%以下の新潟5議会、山形4議会)を選択した。全体として見るならば、両者の違いは排出ルートの違いによるところが大きい。男性議員の場合は町内会・自治会等の地域既存集団、地域の経済団体・企業、労働組合が圧倒的であるが、女性議員の場合は政党や、既存集団以外の地域活動(教育・福祉)、消費・環境保護・女性地位向上等の市民活動によるものが多い。属性に関して言うと、まず年齢では女性議員は50代、40代が多く、男性議員は50代、60代が多い。前者の場合は生活上の何らかの課題認識から立候補に至る場合が多いが、後者の場合は一定程度の人生目標を達成した後の「名誉職」として選択される場合が多い。学歴は女性議員の方が相対的に高く、居住歴は男性議員の方が相対的に長かった(地付き層、出戻り層)。ただし、属性に関しては地域差も大きい。政治的杜会化に関しては女性議員の場合に効果が見られるようだ。この場合、女性議員において地域差が大きい。地方では第1次的社会化、大都市では第2次的社会化の側面が強い傾向がある。排出ルートも、大都市圏の場合は問題解決型市民活動が多い。以上の検討から、「地方」において女性の政治参画を促進するためには、地方における各種市民活動の活性化、2次的社会化装置の構築が最も求められる。
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