本研究の目的は、経済のグローバル化が地域産業の杜会的基盤と地域杜会にどのような変化を及ぼしつつあるかを、地方社会の就業構造と農業経営者等の小企業家層の動向に焦点を絞って究明することにある。平成13年度においては、主として以下の様な手順で調査・研究を実施した。 1.既存統計をもとにして、全国諸地域の長期的発展動向について資料整理と分析を継続して行った。今年度においては、人口と産業の長期的趨勢に関しての地域間比較および時期間比較の一環として、近代初期における「内陸地域」の就業構造とその変化という視点から、論文にまとめた。 2.WTO体制の分析を通じて、グローバル経済体制化が日本国内の農業と地域産業にもたらすインパクトについて、論点整理と資料整理を行った。 3.実態調査については、昨年度の2カ所の調査地を、継続して調査を実施した。第一の調査地である新潟県津南町については、中山間地域における農業・就業、中山間地域直接補償制度の効果と定住動向について調査を行った。第二の調査地である宮崎県都城市については、農業と農産加工の結びつきと地場産業の実態について継続して調査を行った。津南の場合には、農業中心の地域産業構成と地域定住条件が、グローバル状況の下でも自己維持力を持つことを確認できた。都城については、産地間競争が国際的規模で広がりつつある中で、農業と農産加工との結びつきは堅調であり、今後の発展可能性を持つことを確認した。 次年度においては農業を基盤とした地域産業構成と、他のタイプの地域産業構成との比較に力点を置いて調査を行う予定である。
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