本研究の目的は、経済のグローバル化が地域産業の社会的基盤と地域社会に及ぼしつつある変化を、地方社会の就業構造・社会構造と農業経営者等の小企業家層の動向に焦点を絞って究明することにある。最終年度に当たる平成15年度においては、主として以下の様な手順で調査・研究を行い、成果のとりまとめを実施した。 1.地域の社会変動を規定する構造要因として、知識経済化、経済グローバル化、日人口構造の変化、この3要因を取り上げ、この3要因の複合が作り出す社会変動について論点整理を行った。さらに、経済的・社会的変動が、国内のセンター(大都市部)、周辺部中心地域(地方都市)、周辺部周辺地域(山村地域)でどのように異なった形態で出現するかについて理論モデルを検討した。また、国勢調査、農業センサス、工業統計等の分析を行い、このモデルの妥当性の検証を行った。 2.本研究では周辺部地域の実態調査が主要な研究課題となる。平成14年度から15年度にかけては、長野県飯山市を集中的に調査し、地域産業の動向と集落レベルでの社会変動(特に集落の社会構成と農業構造の変動)についての聞き取り調査を実施した。平成15年度においては、一農業集落(小菅集落)のインセンティブな調査を実施した。調査結果については、報告書および論文にまとめた。 3.これと平行して、次の2つの資料を利用して、ミクロ地域レベルでの社会変動の分析を実施した。第一は、農業集落カードと国勢調査小地域別集計データを使用した、集落レベルでの統計データの整理・分析である。第二は、飯山市の一旧村(旧瑞穂村)の行政資料による、旧村および集落レベルでの、主として質的データによる変動の分析である。これについては、整理・分析の途上にあり、新たな研究の課題としたい。
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