(1)2年目に当たる本年度は、前年度に引き続き、滋賀県下の病院勤務医、看護師を対象として医療情報開示に関するアンケート調査を実施した。前年度の開業医調査と合わせて、県下の医療従事者の医療情報開示に対する意識の全体像が把握できた。カルテや看護記録の開示によって医療が変わることへの期待感がある一方で、開示への抵抗感や困惑も大きく、厚生労働省や日本医師会等中央の方針と現場での対応の間にギャップが存在することがわかる。(引き続き、次年度は、一般市民向けのアンケートを実施する予定である) (2)開業医のうちわれわれのインタビューに応じてくれた人を訪問し、より詳しく医療情報開示についての考えを聞くことができた。(勤務医、および看護師についても次年度にかけて実施する)20名余りであったが、それぞれが極めて個性的であり、患者にあわせて様々な対応がなされていることがわかった。思っていた以上に診療科間の差異は大きく、画一的な開示方法では患者のニーズに応えられないと感じる。 (3)成果の一部は、平成13年11月第74回日本社会学会大会において、「釈然としない気持ち一開業医へのカルテ開示に対する意識調査をてがかりに」という論題で研究発表した。内容は、上記(1)(2)の分析結果である。 (4)日本では、医療情報開示「問題」は医療現場で開示をめぐるトラブルが多発し、それが問題化して制度が整備されていくという自然発生的な展開をとったわけではなく、インフォームドコンセントのひろがりを受け、患者の権利を伸張させようという運動の一部として制度化が先行した面が強い。構築された「問題」が、いかに実際の社会的場面で発見されるのか、という視点から、さらに分析を進めていく予定である。
|