日本のケアサービス分野の社会的企業については、引き続き高齢者生協などの社会的企業に関する面接調査を実施したが、日本の非営利セクターの動向を観察するために、NPOサポートセンター、三重県庁NPO室などのNPO中間支援組織に関する調査も実施した。2002年3月の日本NPO学会大会においては、ヨーロッパにおける社会的企業をめぐる概念・理論に関する研究報告を行った。イギリスについては、高齢者ケア分野のボランタリー組織(NPO)のエイジコンサーン・イングランドや非営利セクターの支援に積極的なレディングの自治体職員に対する面接調査を実施し、社会的企業を含む非営利セクターの動向を観察するためにNCVO(NPOの全国協議会)の研究大会にも参加した。社会的企業が政策レベルで注目されつつあるスウェーデンについては、関連分野の研究所を訪問し面接調査を実施、ケアサービス分野の社会的企業に関する包括的データを入手した。 今年度の研究方法は、政府の社会政策と社会的企業・非営利組織との関連に焦点をあてて、中間支援組織や研究機関、自治体に対する調査に重点を置いた。本研究において得られた知見は、イギリスやスウェーデンなどのEU加盟諸国において、従来の社会サービスの外部委託化という文脈からだけではなく、失業やケアサービスからの低所得高齢者の排除など、いわゆる「社会的排除(social exclusion)」の解消をめざす社会政策上のツールとして、社会的企業をはじめとする非営利セクターと政府のパートナーシップ(Public-Private Partnership)が重視される傾向にあるという点である。一方で、政府とのパートナーシップの強化に伴う公財政依存は、社会的企業の政府からの自立性を弱めるという否定的な現象も招来している。来年度は、本研究の課題にかかわるこのパートナーシップの内実について、より質的包括的データに基づき検証したい。
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