本研究は、国内の「宗教都市」を対象として、都市的世界における宗教教団の社会的機能を比較杜会学的に明らかにすることを目的としている。ここで「宗教都市」とは、全国規模の教団の本部が所在し、そこが宗教的色彩の濃い都市であると広く認識されている都市のことである。本研究では、とくに宗教の統合・葛藤機能を重視する立場から、宗教教団が、かかる「宗教都市」の社会構造と市民の生活構造とに果たしている社会的役割を解明しようとしている。 奈良県天理市と天理教、大阪府富田林市とPL教団、京都府綾部市と大本、岐阜県高山市と崇教真光、岡山県金光町と金光教、静岡県修善寺町と世界真光文明教団などを幅広く調査し、行政と教団で聞き取りと資料収集を行いながら、焦点化の方向を模索してきた結果、どの教団にも大なり小なり社会的活動、社会的貢献の努力は見られるものの、とりわけ奈良県天理市における天理教と、大阪府富田林市におけるPL教団の活動には、いろいろな意味で重要な知見が含まれていた。 具体的には、市会議員を通した政治過程への参入、市行政とのかかわり、地域貢献にかんする教団の指導理念と信者の実践、教団の福祉活動、および教団関連企業の杜会的貢献などについて両教団から得られた知見は、きわめて貴重な研究成果であった。
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