(1)地方中小都市の内発的発展における<場所の個性>のもつ重要性に関する文献研究を行ない、近年の地域経済学にみられる<場所の個性>に着目する動向を整理した。また、この<場所の個性>に着目する観点から、社会学におけるこれまでの「構造分析」という理論枠がもつ問題点とその歴史規定の考察を行なった(成果は学会誌に掲載予定)。 (2)内発的発展と<場所の個性>への着目視点から、主に東北地方の7つの地方都市(八戸市、花巻市、北上市、米沢市、会津若松市、燕市、桐生市)を対象とした予備調査を実施し、課題に関連する資料収集とヒアリングを行ない、この着目視点からの本調査実施への見通しをたてた。 (3)上記(2)の予備調査を通して、各市の地場産業が各市のそれぞれの<場所の個性>をかなり体現していたこと、しかし、1960年代以降の「開発」という経済過程のなかでの地場産業の衰退傾向とともに、どの対象都市においても旧来からの<場所の個性>の抽象化傾向があらわれている点を明らかにした。 (4)しかし、上記(3)にもかかわらず、各市に新たに立地する先端企業は、その進出の理由として各市の某かの<場所の個性>を掲げている点、そしてその内実は、旧来からの<場所の個性>がなんらかの形で改編されたものである点を明らかにした。 (5)現時点での各都市の<場所の個性>の総体的な内実をいかに実証的に解析していくか、その分析の新たな理論枠を考察し、来年度はそれに基づく詳細な実地調査を行なう予定である。
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