1 東北の主な地方工業都市を対象にした各年度の調査を踏まえて、各都市の戦後の開発史とその特徴について比較分析を実施した。その結果、内陸型の早期企業誘致都市に属する北上市と米沢市においては、とくに1980年代以降になって、企業誘致のみならず内発型の工業振興がその勢いを増しており、そこには、行政のみならず地元の代表的な中小企業の相互連携が一定の役割をはたしていることが明らかになった。また、花巻市の工業においては、その戦後のスピンオフの歴史もかかわって、一定の起業がみられるとともに、行政による起業化支援の試みが功を奏しつつある現状が明らかになった。 2 これまでの調査研究を踏まえて、「場所」にかかわる理論的な一般化を試みた。その結果、各工業都市の戦後の開発史にはそれぞれの都市が抱える一定の個性とともに、行政や企業経営者上層が描く「場所」への意図が大きな役割をはたしており、そのこで意図の内実によって、地域資源が動員され編成されることを明らかにした。そのことを踏まえれば、都市の科学的な理解にとってもつ、「場所の個性」と「場所への意図」への着目視点の重要性が指摘できようかと思う。 3 一定の補充調査を行ない、また、とくに1980年代以降の経済のグローバル化にともなう近年の東北経済の動向を統計的におさえる作業を追加的に実施したうえで、研究課題に関する総合的な分析を加え、その結果を、研究報告書として作成した。
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