本年度は、従来の研究を統合するひとつの成果として、理論的に「コンヴァーサル・メディアンビニエンス」という概念を創出することができた。これまで、アフォーダンス概念は、成人の持つ知覚と環境との相互作用を意味するものとして使用されてきたが、本研究では、高齢者や化学物質・電磁波過敏症患者といった者たちの知覚や感覚を許容するものとしてアフォーダンスを社会的に拡張する必要性を訴える。さらに、現在、未来のメディア環境のモデルとしてユビキタス社会やタンジブル・ビットといった試みがなされているが、本研究では、それらが、従来のアフォーダンス概念に基づいているために、適用範囲が限定されているという限界を指摘する。それらにかわり、「ユニヴァーサル・メディアンビニアンス」を提唱するが、これは、情報通信におけるユニヴァーサル・サービス、および、環境デザインにおけるユニヴァーサル・デザインを包含する新しい概念である。本年度は、メディアコミュニケーション研究所研究会および理工学研究科において、以上の概念の創出を拭みるとともに、未来のカフェという具体的な公共空間についての展示、ビデオ制作、論文執筆などの共同研究をおこなった。来年度はこれらをもう一歩すすめて、北欧社会と日本のエネルギー環境、高齢者政策およびユニヴァーサルデザインとサテナラブル・デザインの観点を比較したいと考える。
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