研究概要 |
1.「アフォーダンス」概念を社会的に拡張するとともに、「持続可能性」概念との接点を探ることにより、グローバルでローカルな環境のデザインを可能にするコミュニケーションの諸要件を検討してきた。 2.理論的な探求と同時に学生たちの知識創造プロジェクトの運営を両輪として研究をすすめてきた結果,多文化・多共生をこえたグローバルとローカルが相互作用するようなリフレクシヴなデザイン実践をうみだすには、以下の3様相のコミュニケーション・ストラテジーが想定できるという考えに至った。 すなわち、1)ユニヴァーサル・デザインや逆にローカルなオルタナティヴ技術の再評価,さらに通常のコミュニケーション手段にアクセスできない者たちの参与を促す、新たな環境,メディア,芸術などの共同知のデザインプロセスやクリエイティヴな実践における「創発的コミュニケーション」,2)WHOやEUなどのグローバルな環境基準や有機食品認証などの制度確立,教育・医療現場や職場,購売活動における配慮やインタラクション,公共交通移動空間や他者との近接空間でサヴァイヴァルするための「リスク回避のコミュニケーション」,3)消費者相談センターへのクレイム申し立て、有害物質使用禁止のグローバルな規制や途上国生産者の健康搾取の防止、行政や企業、ひいては市民の社会的責任や倫理を問う政治経済文化活動などにみられる「システム変革のコミュニケーション」などである。 3.今後は、グローバルなフローが錯綜したローカルな帰結として、身体の免疫・神経・内分泌系統にかかえる環境関連疾患をもつ者たちによる文化と環境の再創造の営みを上記の3つの観点から検討してゆきたい。さらに、理論的には、「ユニヴァーサル」および「コモン」概念に注目しつつ、グローバルでローカルな環境のデザインにおける「リスク」と「アレルギー」を日本・EU、特に北欧のメディアと都市建造環境との関連で、超文化的および進化論的視点をふまえて考察する予定である。
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