研究概要 |
平成12年度は、マス・メディアが、社会規範の形成・変容に影響を及ぼすものと考え、マス・メディアの内容分析を行った。マス・メディアといっても主要新聞紙であり、新聞記事に表出された社会規範に関するメディア・フレームが、人々の意識に影響を及ぼしている、すなわち人々の判断枠組みとなっていると考えたのである。 具体的には2つの内容分析を実施した。一つは、「大人」であることの規範と役割期待を描いていると思われたので、「成人の日」の社説を取り上げることにした。対象は朝日新聞の社説で、昭和30年代後半からほぼ毎年掲載されていたものである。社説で述べられていたことは、それぞれの時代における「若者イメージ」と「新成人」に対する期待や訓話などであるが、そこから「大人」を規定する社会規範を読み取ることができる。もう一つは、かつて見田宗介(1965)が試みた読売新聞の「人生案内」の内容分析を踏襲するかたちで実施した。対象は、同じ「人生案内」の投書とそれに対する回答で、1969、1979,1989,1999年の各一年間のものを取り上げた。かつての見田の分析枠組がすでに十分機能しなくなっていたためいくつかの変更点を加えたが、家族や職場、社会における個人の悩みや人間関係の問題に見え隠れする「規範」の年次比較を行うことで、戦後日本社会における規範の変容をとらえることができた。 平成13年度には、マス・メディアが呈示するこうした規範の枠組みを今日の人々がどのように捉えているかを見るために、一般サンプルを対象に意識調査を実施する予定である。
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