昨年度(平成12年度)は、マスメディアが社会規範の形成・変容に影響を及ぼすものと考え、マスメディアの内容分析を行った。 今年度(平成13年度)はそれを受けて、調査を実施した。調査の主な目的は、現在の人々がどのような規範意識をもっているのかその意識構造を明らかにして、そこから社会規範の変化を検討するとともに、メディア・フレームがどの程度影響を及ぼすのか検証することである。調査対象は、神奈川県の一般成人男女1500名であり、443名からの回答を得た。 主要な結果をまとめる。まず規範意識は変わってきたのかという点についてだが、これは変わった側面もあり、変わらない側面もあるといえる。「伝統の尊重」や「上下関係」「義理人情」などいわゆる日本の伝統的な社会規範は予想していた以上に保持されていた。また、ことわざの多くも支持されていた。しかし一方で、家族や家庭をめぐる規範には年齢や性別による大きな相違があった。特に顕著な年齢差が見られたのが性規範であった。 規範の曖昧化、希薄化については、一部の結果からそうした傾向を認めることができる。若年層の方が、全般的に判断の根拠が不明確で、その時その場の自己欲求に左右されやすく、一貫性に欠けていた。 メディア・フレームについては、残念ながら調査設計が綿密でなかったため、明らかな影響を析出することはできなかった。ただし、家庭や学校で教えられたとする道徳内容は主として旧来の規範であるという結果をみると、変わりつつある社会規範の判断枠組はメディアが提供している可能性が大きいといえよう。
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