(1)理論研究:G・H・ミードのパースペクティブ論を中心として、「サブーメイン構造」の立論に有用と思われる理論的知見を検討した。ミードを含むアメリカ機能主義の発想が、大衆性と思想性との両立を可能にさせるようなものであることを確認した。この点については、「書評に応えて」「現代文化と社会秩序」(いずれも裏面)のなかで中間的成果を論じている。(2)概念の吟味:サブカルチャーの「サブーメイン構造」については、本研究の骨子である「多極化」説を、「融解説」を中心とした先行研究と対比するとともに、その内実を「多重化」「可変化」「装置化」 という三点において規定し学会報告を行った。司会者の石田佐恵子氏をはじめフロアー各位から、サブカルチャーの定義、「メイン」の定義などについて、質問が寄せられた。これを、『社会学評論』掲載の『サブカルチャーの社会学』書評(石田佐恵子氏執筆)、『ソシオロジ』掲載の書評(長谷正人氏執筆)の批判と対照・吟味して、成果の一部を「書評に応えて」(裏面)にまとめた。(3)調査の進行状況:「サブカルチャーのサブカルチャー」のフィールドワークをパイロット的に中国九州地方で行った。女子大生(「居場所をさがす女子大生」)、地方の若者文化(「若者の意識変化と地域文化の可能性」)、若者と恥の文化などについて、中間報告的な論考を執筆した(いずれも裏面)。派生的ではあるが、青年層を「勝ち組-負け組」に二分するような人的資源動員ではなく、よりきめこまかな資源動員が今日求められているのではないかという論点が結果として明らかになった。「多極化」の内実を政策的に提起した論点である。(4)継続する作業:「サブのサブ」についてはさらに、少年犯罪、死生観などについて、中央紙と地方紙の新聞報道言説を比較する調査を進め、論考を準備中である。(5)課題と問題点:ただし、当初予定された「地方の地方」のフィールドワークは今後の課題として残されている。このことは理論的研究の結果であるが、調査計画を一定変更する必要がでてくる可能性もある。理論研究は引き続き継続する予定である。
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