1.目的本研究は、マスメディアと世論との関連を、「フレーミング効果(framing effects)」仮説の観点から追究するものである。フレーミング効果仮説とは、メディアが特定の公共的争点について報道する際に用いる解釈枠組み(メディアフレーム)が、同じ問題に対する受け手の解釈枠組み(受け手のフレーム)を規定ると仮定するものである。言い換えれば、ある公共的争点をメディアがどう定義するかが、人びとがその争点をどう認識するかに影響を与えるという主張である。本研究ではコミュニケーション学者A.エーデルステインらが提起した「問題状況(problematic situations)」図式を援用し、多様な争点・テーマに適用可能な汎用刑フレームモデルを構築し、さらにフレーミング効果を自然的状況で定量的に測定するごどを目指した。 2.方法研究対象として選んだテーマは「低迷する日本の経済状況」である。東京都在住の成人を対象とした意識調査によって、一般公衆がこの問題をどう認識しているかを調べ、他方、意識調査の実施期間に先立つ1年間分の全国紙(朝日、読売、日経)の1面に登場した経済記事を内容分析することで、この問題に対するディアフレームの様態を探った。 3.結果新聞が日本の経済状況の問題について論じる場合こ「制度崩壊」フレームを用いることが最も多かった。すなわち、長期不況の原因として、景気循環的要因ではなく、構造的要因(日本型システムの制度疲労)が強調されていた。一方、一般公衆の側でも、新聞の経済報道への注意度が高い人ほど、この同じアレームを重要視する傾向のあることが確認された。これはフレーミング効果仮説を支持する結果である。さらに、フレーミング効果と密接な関連を有する属性型議題設定効果についてもその概念的異同について論じ、また、同じデータで属性型議題設定効果の検証も行なった。
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