スウェーデンの全289コミューンを対象に2000年度に調査を実施した。各コミューンが病院またはランスティング(県)に支払う「社会的入院費支払い責任」の毎年の支払い責任額を1992年から1999年にかけて調べた結果、l996年までは1コミューンあたりの平均支払額が減少しているものの、1997年から99年にかけて再び増加傾向にあることが実証的に確認できた。 2001年度に研究し知見としてまとめたのは以下の2点である。まず第1に、ホームヘルプサービス利用時に発生する自己負担を各コミューンで比較したところ、著しい格差が確認できた。1か月間にホームヘルプを45時間利用し掃除サービスを別に2時間利用した場合についてシミュレーションした結果、月収7917SEKの高齢者の場合には、最低460SEK(Linkoping kommumの場合)から最高2753SEK(Fargelanda kommunの場合)まで6倍近い格差が見られた。一方、月収12500sEKの高齢者の場合には、607SEK(Harjedalen kommun)から3907SEK(Mariestad kommun)まで6倍を越える格差が確認できた。第2に、スウェーデンにはケアサービスを利用し自己負担額を支払った後に毎月最低限の生活費を残してもらう制度がある。この生活費のことをリザーブド・アマウント(reserved amount)と呼ぶが、これについてもコミューン間で著しい格差が見られる。すなわち、在宅単身者では、1350SEK(Olofsrom kommun)から4200SEK(Vaxholm kommun)まで差が見られ3倍以上の開きがある。高齢者では、900sEK(Hallstahammar kommun)から3910SEK(Vara kommun)と4倍以上の開きがある。今後は、地方分権の理念と上記のようなコミューン間格差の関連性について詳しく研究していきたい。
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