インドネシアは建国以来「多様性のなかの統一」を国是とし、国づくりの目標としてきた。しかし、「多様性」を強調すれば地方や民族の重視につながり、逆に「統一」を強調すれば国家や中央集権の重視につながる。本研究は、このような二律背反的な課題を担いつつ第2代大統領のスハルト体制下で進められてきた農村開発政策が、国家による農村社会の強力な中央集権的再編であったことを、さまざまなジャワ農村社会の事例研究を通して明らかにしようとしたものである。 「スハルト体制」下で実施されてきた農村開発プログラムは、農村住民に直接的な参加を求め、それを通して住民を啓発し、教化する住民統制型の開発プログラムであった。たとえば、全国的に実施されてきた農村電化、成人識字率向上キャンペーン、村への新聞普及、その他のマス・メディナの普及、家族計画の普及、家族福祉の向上、米の増産、および村落協同組合の設立などの開発プログラムがそれである。 本研究では、これらの農村住民参加型の農村開発プログラムのうち、とくに未就学成人に教育の機会を与えて識字率向上をめざす取り組み、農村における学校教育の普及とカリキュラム改革の取り組み、そして国民道徳の基本原則となるパンチャシラの教化に関する取り組みについて詳細に分析した。
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