(1)論文「ロシアにおけるサン・シモン主義」では、ソ連崩壊にかかわるサン・シモン評価の貶めについて、1976年出版の『ソヴェト大百科事典』と1998出版の『ロシア社会学百科事典』との比較等をとおしてまず論じ、次いで19世紀ロシアの知識人(ルーニンやゲルツェン、オガリョーフ、ベリンスキー、ドストエフスキー)への影響について簡単にみたうえで、20世紀ロシアにおけるサン・シモン(主義)研究史について述べた。現在は、ソ連時代のサン・シモン(主義)研究者ゲ・エス・クチェレンコとヴェ・ペ・ヴォルギンの研究書では余り論じられていないオガリョーフとラブローフの思想について調べている。 (2)今年度もパリのアルスナル図書館等で資料収集をしたが、最大の成果はサン・シモニアン・パサージュとアンファンタン・パサージュを地図を頼りに二度も訪れ、写真をとってきたこと、そして前者では世界的に評価の高いパリ・パサージュ研究書(事典)の誤記を発見したこと、さらにそこに「サン・シモニアン」の名を冠した大きな社会事業アパート(?)と事務所が存在しいまも活動していることを初めて知ったことである。この点については調査研究する必要がある。それから、前年度にサン・シモンの墓を訪れた時現地の事務所で回答拒否された私の質問-故・森博東北大学名誉教授が1980年に訪れた時には壊れ荒れていた墓が再建されているので、それはいつ誰によってか-について、今回フランス人の知人の協力を得てある程度わかったことも成果である。 (3)今年度購入した諸研究書で現在は、サン・シモンの伝記-森教授の遺稿の考察-とサン・シモンのヨーロッパ論-EUの結成・展開との関連で-について研究している。
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