これまでにも地方自治体におけるケアサービス情報の提供の不十分さが指摘されながらも、新たな情報提供にはあまり積極的な取り組みはみられなかった。介護保険制度が実施され、地方自治体にとっては今後この制度の定着を図ること、また住民にとっては制度を検証することが求められている。今年度はこの介護保険を中心に情報を伝達する上での課題と住民のサービス情報に対する認識を明らかにするため、介護保険制度の利用者および市町村の介護保険担当課を対象にアンケート調査を実施した。京都市A区の20ヶ所の事業所にアンケート用紙を留置し、利用者に回答を郵送してもらう方法で実施したところ、2ヶ月の間に300通の回答があり、その結果、制度の仕組みやサービスの内容がわかりにくいという回答が多く見られた。また大阪府下の49市町村に情報提供や広報の現状、課題についてのアンケートを郵送により実施したところ、29市町村から回答が寄せられた。1町を除く全ての市町村が情報伝達のあり方に課題ありと回答していた。ケアサービス施策の実施前にニーズ調査を行っているのは16市町村であったが、調査を実施していない市町村と比較して、課題として情報伝達が不十分という認識だけではなく、情報伝達の工夫の必要性を指摘する傾向が認められた。これと関連して介護保険制度実施前の要介護度別の見込み対象者数と実際の判定の状況に差異が大きい市町村は、調査を実施していない所が多く、情報伝達の課題では住民の意識が高まっていないことを指摘していることが多かった。これらの結果から、住民の制度の理解には工夫が必要なこと、また行政の積極的な取り組みは行政の課題認識につながっていることが推察された。次年度は充分に情報伝達ができている1町の現状を詳しく知ると同時に、今後の情報伝達と収集のあり方についてより検討を深めるためコントロールスタディに取り組む予定である。
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