介護保険事業も3年目となり、その制度が住民にどのように受け止められ、介護を必要とする人にとってどれだけの効果をあげているのかが、今後の計画の進展に大きな影響を与えるものである。昨年度の調査研究において、介護を必要とする本人や家族にとって制度の仕組みやサービスの内容が充分な理解には至っていないことが明らかになった。またニーズ調査の実施の有無と自治体の情報伝達の課題認識に違いがあることも認められた。今年度は昨年度の研究成果を踏まえ、介護保険の利用者や家族にパンフレットの配布や訪問による働きかけを行い介護保険制度に対する認識の変化を調べた。また、自治体については介護保険制度の理解を住民に深めるための活動を積極的に展開している自治体のうち、3自治体についてこれまでに行われた介護保険の利用状況に関する調査結果をもとに、住民への情報伝達方法の効果について比較研究を行った。その結果、利用者がサービス評価を行うために開発した「自己点検のしおり」を全戸配布するなど京都市A区のケアネットワーク推進協議会の取り組みが相互の納得による契約を成立させるために効果があることが認められた。さらに自治体が行う情報伝達では高齢になるほどマスメディアを通した情報は伝わりにくくなり、一人暮らしなどの高齢者ではケアマネージャーや医療機関などで情報を入手する場合が多くなることが認められた。一人一人の意識を高める工夫や利用者の年齢や家族構成に配慮した情報提供の必要性が考察された。
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