地域の高齢化に対する地域社会・地域組織の認識と取り組みに対する一連の研究において、平成12年度は、研究対象地とする居住条件不利地域に関して離島地域を選定して、文献研究及び実地調査を実施した。そのうち文献研究としては、まず、島嶼地域を研究対象とする社会学領域の先行研究を収集・整理した。その結果、島嶼地域研究の学史的展開の把握および島嶼地域における様々な居住条件不利性(日本の各地で発生した地域問題がさらに振幅して発生する島嶼地域の要因)の手がかりを見出すことができた。また、島嶼地域に関して、調査対象地を長崎県五島地域に選定するとともに、五島地域に関する文献の収集を五島地域・長崎県・福岡市・東京都で実施した。 五島地域を対象とする実地調査に関して、ヒアリング調査および調査票調査を実施した。 ヒアリング調査に関して、行政機関・行政関連機関・地域機関・地域の住民組織等、そして、宗教組織に対して実施した。介護保険法の施行前後にあたったが、五島地域では民間営利組織の参入がほとんど見られず、非営利組織による在宅福祉サービスがカバーしている状況で明らかになった。とりわけ、カトリック系の宗教法人の活動展開に地域の特徴が見出せた。また、地域の生活拠点機関である郵便局等による付加的サービス提供(居住条件不利地区に居住する独居高齢者等への声かけ・買い物代行など)が明らかになった。さらに、地域住民に対する調査票調査を実施して、居住条件不利地域の住民生活の状況、とりわけ高齢者独居世帯・高齢者夫婦世帯の生活状況の把握をめざした。現在、この調査票調査の結果については集計中である。 なお、平成13年度も、島嶼社会を対象とする調査を継続する予定である。とりわけ、郵便局等の地域の生活拠点機関による対応、宗教組織による対応の把握をめざしている。
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