「地域の高齢化に対する地域社会・地域組織の認識と取り組みに関する研究」では、平成12(2000)年度〜15(2003)年度の4年間、居住条件不利地域の典型的地域として長崎県五島地域を選定して、五島地域の高齢化に対する地域社会・地域組織の具体的活動を五島列島の主島の福江島・中通島および小離島を調査対象地として、以下の調査研究を実施した。 まず、社会学を中心にした島嶼社会研究およびEUの政策等を含む居住条件不利地域に関する理論的整理および居住条件不利地域における福祉社会の形成のエージェントに関する分析視角の検討を行なった。その結果として、居住条件不利性の要因および住民ニーズに対応した生活拠点施設の多機能化の傾向を明らかにした。 次に、居住条件不利地域の中でも著しい不利地区で、高齢化が著しい小離島に居住している高齢者の生活実状の把握を目的にして、小離島住民調査を実施した。そして、その結果として、生活サービスへの高齢者の高いニーズや生活拠点施設の「隠れた」地域役割等を明らかにした。 さらに、居住条件不利地域において高齢者が保持する社会関係が制度化することで、福祉社会の担い手が形成される事例の調査を実施した。その結果として、地縁関係および類縁関係・サービス関係の制度化の状況、そして寄り合い関係の制度化の可能性等を明らかにした。 そして、これらの調査研究および研究成果を基にして、科学研究費補助金研究成果の報告書である『五島列島の高齢者と地域社会の戦略』を著している。
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