今年度の研究成果は次の二点である。 第一に、前年度から引き続いた理論研究の成果として、探究共同型の総合学習は、授業展開における、「主題設定・探究調査活動の展開・活動のまとめ・事後の評価と今後の課題」の各場面について、子どもたちと教師、あるいは地域の人々や保護者などが共同して探究の各場面に参加することが求められるということである。そのなかでの課題は、子どもたちが教師たちと共同決定しうるための能力、すなわち主題決定を含めた授業構成への参加能力を、発達的見地からどのように高めていくかである。この点について、探究共同型カリキュラムを、大きくは、教師提案-教師決定型から、教師提案-子ども選択型へ、さらに、教師と子どもの共同決定型へ、という授業内容構成における三段階の発展構想として考えた。 第二に、探究共同カリキュラムの実質的成果を、部分的に教育実践を通して、教室外の地域や多様な人材の有効活用といった側面から検討し、探究共同のあり方の多様性を模索できた点である。今年度は、岩手県岩手郡玉山村立生出小学校の協力を得て、6年生「総合学習」の時間において、活動展開の場面に即した探究共同型カリキュラムの模索を、大学生と子どもたちとの共同学習という形で試みた。小学校での総合学習の場合、担任一人で子どもたちの課題の追求と深まりに対応することの困難さも挙げられるが、学校外の物的資源・人的資源を、子どもたちとの共同的な探究活動にどのように活用するかという視点が授業構成の成立条件の一つとして必要となる。
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