本研究は、高退学率を示す東北地方の非進学校で、生徒の退学決定がどのような仕組みでなされ、またその後の社会生活にいかなる影響を与えたのかを実証的に明らかにしようとするものである。 本年度は、2年目として、以下のような諸調査を行い、その成果を中間発表した。 1.在籍生徒に対する質問紙調査及びインタビュー調査 学校生活や友人関係等に関する質問紙調査を、抽出クラスの生徒について実施した(昨年度から継続)。その結果によれば、退学意思のある者が全体の7割弱に及び、学校生活に対する意欲喪失が一層強くなっていた。またインタビューでは、リジットな学校生活への嫌悪感が語られる一方で、教師への無関心や家庭への引きこもり傾向もみられた。 2.退学者へのインタビュー調査 退学者調査は、連絡不能などもあり予定どおりには実施できなかった。少数の結果だけからみると、彼らが退学を否定的に理解することはあまりなく、時間に縛られないフリーター的な生活への肯定がなされ、携帯電話等を利用した友達ネットワークへの信頼がみられた。学習への意欲はみられるものの、再度の入学には概して消極的であった。 3.調査結果の中間発表および資料収集(日本およびアメリカでの公表) こうした成果の一部について、日本子ども社会学会等で口頭発表を行い、友人関係の影響などに関する示唆をえた。また、カリフォルニア大学サンタクルーズ校での研究例会等において、日本の高校退学の現状を踏まえつつ調査結果を発表し、非行問題の専門家などから貴重なサジェスチョンを得、資料提供も受けた。 今後、指摘された家庭や友人文化と学校文化とのギャップなどに関する視点を活かし、退学者の学校観とその影響に関する情報の収集・整理および分析の作業に進みたい。
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