本研究は、退学率の高い地方の私立高校で、生徒の退学がどのような人々の影響で決定され、またその後の社会生活にいかなる影響を与えたのかを、インタビュー調査などによって明らかにしようとするものである。本年度は、最終の3年目として、以下のような調査を実施し、その成果をまとめるとともに、最終報告書も作成した。 1.教員調査:数名の教員に対して、退学指向を持つ生徒への指導の今日的な留意点と退学の抑制要因に絞って聞き取りを行った。その結果、学校に対するネガティブな社会的評価を払拭することが重要という指摘が多く、具体的な方策として学校名の変更などが検討されていることもわかった。 2.在籍生徒調査:昨年度に引き続き、学校生活の現状評価と退学指向との関連に関する調査を、生徒十数名について実施した。その結果によれば、目立たない通学意志の明確でない者の入学後早期における退学が目についており、退学決定過程における友人ネットワークの重要性が改めて浮かび上がってきた。 3.退学者調査:この調査は、今年度も連絡不能などあり困難をきわめたが、十名ほどの結果からみると、彼らが退学を否定的に理解することはほとんどなく、家庭の生活環境の制約や学校の名前(チャーター)による抑圧などを回避し、自分の好む生活スタイルの実現を図る有用な決定と評価しやすかった。しかし、学校時代に形成された友達ネットワークの残存がそうした意識を下支えしているともいえ、在学したこと自体を否定する声は意外に少なかった。この点からみると、高校を選好する期間の充実や転学への通路を確保することなど、柔軟な再チャレンジのできる教育システムを構築し、学校内での人間関係の構築を支援していく体制を整備することがきわめて重要とみられた。
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