本研究は、退学率の高い地方高校で、生徒の退学がどのような条件の下で決定され、また、その後の社会生活にいかなる影響を与えたのかを、インタビュー調査などによって明らかにしようとしたものである。 3年間にわたる研究成果として、以下のような知見をえた。 1.在籍生徒調査:学校生活の評価と退学指向との関連に関して、質問紙と聞き取りにより調査したその結果、就職意欲があり、広い友人ネットワークを有し、学校生活への不満の強い生徒に退学指向が強いが、それは学枝規範への逸脱とはつながらないことが指摘できた。また、就学指向の強い生徒であっても、退学者との対比から自分自身の学校評価を構築する傾向があった。 2.教員調査:各世代の教員に対して、退学指向の生徒への指導と退学の抑制方法などについて聞き取りを行った。その結果、当該学校に対するネガティブな評価が退学を誘発するとし、各ケースによって退学過程は異なり、進路転換から「危機」まで多様であるとされた。 3.退学者調査:退学した生徒について聞き取り調査を実施した。その結果をみると、彼らが退学を否定的に理解することはなく、家庭の生活環境の制約や学校の世評からの抑圧などを回避し、自分の好む生活スタイルの実現を図る有用な決定と評価していた。しかし、学枝時代の友人関係の残存がそうした意識を下支えしているといえ、就学自体を否定する声はなかった。 それゆえ、高校選択方法の転換や転学の確保など、再チャレンジ可能な高校システムを構築し、校内での人間関係作りを支援していく体制を整備することが重要とみられた。
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