本研究は、フランス革命後期、総裁政府期(1795〜1799年)の公教育政策について、これまで存在の知られていなかった総裁政府公教育評議会(Conseil de l'Instruction publique)関係の史料群を用いて、実証的かつ体系的研究を行うことを目的とするものである。 研究対象とする総裁政府公教育評議会(Conseil de l'Instruction publique)は、国民公会期の公教育委員会の仕事を引き継ぎ、新しい教育制度の整備、法案・法令作成、公教育の指導要領の作成など、内務大臣を長として設けられた重要な任務を帯びた組織であった。にもかかわらず、総裁政府公教育評議会による公教育の組織作業は、これまでフランスの研究者によっても全く調査分析が行われていなかった。その大きな理由は、総裁政府期の公教育政策について体系的研究を行うための史料が存在しないと考えられてききたためである。 しかしながら、申請者は、総裁政府期に内務大臣がフランスのすべての地方についての公教育の網羅的な実態調査を行っていた事実をてがかりに、内務省関係文書の調査をすすめ、文書番号AD/VIII/1〜45の中に、総裁政府期の内務大臣関係の公教育の重要史料が存在することを発見した。 したがって、本年度の研究においては、これらの史料について、詳細な調査を行い、全容把握と目録作成を行った。また複写の必要な重要史料部分を確定し、マイクロフィルム化を申請して取り寄せた。 さらに、総裁政府における公教育評議会の位置づけ、近年の革命史研究における総裁政府をめぐる論争状況など、この文書を読解する上での歴史的拝啓の検討を行うため、関係文献を渉猟し、また、フランスの研究者からのレヴューを受けた。
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