本年度は、第一に、米国カリフォルニア州サンディエゴ統一学区の学校選択システムに関して、同学区教育委員会の文献資料の収集とその読み込みを通じ、選択システムの構造の解明及び児童・生徒の就学実態の分析を手がけた。同学区の学校選択システムとしては、学区内移動と学区間移動のふたつの類型を見出すことができるが、前者については、さらに、マグネット・スクールやチャータースクールなどを対象にした場合と、近隣学校を対象にした場合とを区別することができる。米国の学校選択システムは、我が国の場合に比すると格段に弾力的であるが、学区内部での学校クラスターの編成や各学校の収容力の限界を前提にさまざまな選択の原則の設定など、成熟度は高い。第二に、我が国については、東京都品川区における平成12年度からの小学校選択制、及び、平成13年度からの中学校選択制の実態について、データを収集した。同区の実態をサンディエゴ統一学区の実態と対照した場合、同区の就学人口移動の特色と考えられるのは、学校選択が「学校の特色」にはほとんど反応していないことである。また、第三に、我が国全体の学校選択制の動向を把握するために、全国市区町村教育委員会を対象に郵送調査を行った。 本年度の研究は来年度も継続され、米国サンディエゴ統一学区については、教育委員会等のヒアリングを通じて、学校選択システムの運用の実態を把握すること、人種的、社会階層的構造と学校間移動の実態との関係を明らかにすること、などを課題としている。また、我が国については、全国調査の集計を進めること、東京都品川区について、保護者と教員の選択意識のずれ、選択制が教育実践の「かたち」に及ぼす効果などの分析を進めること、などを課題としている。
|